【短】Reduce
「みゃーこは相変わらずだな」

「…ぇ……?」

少しずつ本降りになって来た雨に、彼の呟きは掻き消され私の元には上手く届かなかった。

その代わり、軒下にいるのに雨樋から零れ落ちてくる雨粒が、ぱたり、と止まる。

「あたるくん?」

「ほんと、風邪引くなよ?これ貸すから」

「貸すって…私家ここっ!ちょ、あたるくん?!」


そんな私の声を遮って彼は背を向け手をひらひらと振る。


これじゃあ、人質ならぬ【モノ質】じゃないか……。

そう思いながらも、もう一度彼に会えるかもしれないという、淡い期待に胸がほんの少しだけ高鳴った。


彼は…あたるくんは、そういう所で嫌味にならないほどの、強引さを持っている。

あの時も…あの時も…そうだったと、記憶が蘇っていった。




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