【短】Reduce

「じゃあ、何か問題でも?」

「あたるくん、こういうのはさ、…」


そこまで言って、レストランで最初に出された、氷の殆ど溶け切った水で喉を潤すと、じっと私を見める彼と視線が合う。


「俺はみゃーこと結婚したいよ」

「あたるくん…」


これは、甘い空気が流れている雰囲気ではない。
きっと、彼は私を通して何かを見ている。


「なんで、いきなり?」

「それは、したいと思ったからだよ」

「だからって、何も今日じゃなくても…」


そうだ。
今日は、一昨年亡くなった祖父の法要があった。
そこで、一応彼を家族に紹介はしたけれど…。


それから数時間後に、まさかこんなプロポーズを受けるとは思はなかった。


だからこそ、何か隠されたことがあるのではないかと警報が鳴る。


流されてはいけない。


だって、相手は……会社でも営業成績常にトップの、営業マン。


口が上手くて、ポーカーフェイスはお手の物なんだから。



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