逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
ブサイク女からの求婚
それは1本の見知らぬ番号から、かかってきた電話で始まった事だった。
金奈駅前にある金の時計台。
ここは待ち合わせに利用され、いつも大勢の人が集まっている。
時刻は午前11時。
「素敵な人」
「カッコいい! モデルさんかしら? 」
「え?俳優さんじゃない? 」
「芸能人より素敵な人ね」
通り行く女性達が振り向いて、声を上げている。
その先にはブルーのスーツに赤いネクタイ姿の、長身で推定188センチほどあるように見え、スラッとした男性がいる。
ちょっとシレっとしたツンデレタイプのような雰囲気で、ほっそりした面長の輪郭にクールな切れ長の目が魅力的。
ひときわ目立つ男性はどこかのモデルのように見える。
誰かを探しているようで、辺りを見渡している男性。
「うぁ、キモあの女」
「マスクしてても、ブサイク丸出しだぜ」
「あれで良く生きてられるよな」
「キモすぎ! 」
通り行く男性が悪口を言っているのは、時計台の下で立っている女性。
マスクを着けているが、顎は二重顎で目は腫れぼったく浮腫んでいて、鼻は団子状態。
茶色い髪はボブヘヤーにして顔を隠しているが、見るからにブサイクと言われるタイプの女性だ。
しかし体系はスラッとしていて、女性にしては背が高く175センチはありそうな大柄。
俯いて誰かを待っているようである。
「あ…」
イケメンの男性が、ブサイクな女性を見て歩み寄って行く…。
ブサイクな女性はずっと俯いていたが、歩み寄ってくる影に気づいてゆっくりと顔を上げた。
「里田樹利亜さんですね? 」
ブサイクな女性は驚いた目をして、ゆっくり頷いた。
「初めまして、宗田忍です」
男性が名前を名乗ると、ブサイクな女性はさらに驚いてまた目を見開いた。
「お待たせして、すみませんでした」
シレっとした目をしたまま、男性こと宗田忍は、ちょっとだけ目を細めて微笑んだ。
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