逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
「やっぱり、みんなで食べるご飯は美味しいな」
食べながら優輝が言った。
「そうね、特に鍋の時なんて家族で囲むと、一段と美味しいものね」
「今日は樹利亜ちゃんも一緒で、いつもよりずっと美味しいよ」
食べている樹利亜が、ハッとなり手を止めた。
「結婚して久しぶりよね、樹利亜ちゃんも一緒にご飯食べるの。いつも、朝早く仕事に行ってしまって帰りも遅いから。ずっと心配していたのよ」
心配してくれていたの?
優輝と希歩の言葉が嬉しくて、樹利亜の目が潤んだ。
「ねぇ樹利亜。そんなに働く必要があるのか? 」
忍に尋ねられると、樹利亜は答えに迷った。
「朝から晩まで、女性が働く事はない。俺がいるのに、そんなに働かせていたら、何しているんだって言われてしまうじゃないか」
「…ごめんなさい…」
「謝る事はない。悪いことしているわけじゃないからな。ただ、樹利亜も家族になったんだ。無理することはないって事だ。お金が必要なら、俺が何とかするし。父さんも母さんも、樹利亜に家にいて欲しいって思っているんだぞ」
「…はい…」
返事をした樹利亜が、とても辛そうな目をしていた…。
「さぁ、樹利亜ちゃん。どんどん食べて」
希歩がまたお椀に具材を取ってくれた。
「樹利亜ちゃん、ちょっと痩せすぎじゃない? ちゃんと食べないと、シワだらけになっちゃうわよ」
ちょとちゃかす様に希歩が言った。
樹利亜はちょっとだけ笑いを浮かべた。
楽しい食事のひと時。
樹利亜も久しぶりに、温かい鍋料理を食べてほっとした一時だった。
食事も済んで寝る時間になって。
寝室にやって来た忍は、ちょっと真剣な目をして樹利亜を見た。
ベッドに座って、樹利亜は俯いている。
「大切な話しがあるって、言っただろう? 」
「はい」
「この人、誰? 」
忍は携帯電話の中にある写真を見せた。