逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

 その写真を見ると、樹利亜はちょっと恐怖に引きつった顔になった。

「すまないが、今日。駅前歩道橋で、一緒の所を見たんだ。随分と派手な人なんだね。誰なんだ? 」

「…すみません、私の…姉です…」

「お姉さん? 樹利亜は、お姉さんがいたのか? 」

「はい…」

「身内は誰もいないって、言わなかったか? 」


 ギュッと唇を噛んで、樹利亜は黙ってしまった。


「本当に、この人は樹利亜のお姉さんなのか? 」

「はい…姉の、芹亜(せりあ)です…」

 
 何となく、違和感を感じた忍。


「そうか。お姉さんなのか。それにしても、何か怒鳴っていたようだが。何を言われていたのだ? 」

「…大したことではありません…」

「何か渡していたようだが。…まさか、お金を渡していたわけじゃないよな? 」



 ブンブン! と、樹利亜は強く首を振った。


 その反応に、忍は絶対に何かあると感じた。


「分かった。それならいいけど。でも、もう仕事はしなくていいからな」

「そ、それはできません! 」

「できない? お金が要るなら、俺が用意する。それならいいだろう? 」

「そうはいきません」

「何故だ? お前が稼いだお金も、俺が稼いだお金も同じじゃないか」

「ダメなんです! 」

「だから、どうして? 」


 ギュッと拳を握り締めて、樹利亜は黙ってしまった。


 小さく樹利亜の肩が震えている…。



 忍はそっと、樹利亜を抱き寄せた。


「何をそんなに怖がっているんだ? 」

「い、いいえ…」

「何かに怯えている事、解っている」

「そんな事…」


 ブ―ッ…ブーッ…。


 樹利亜の携帯が鳴りだした。


「ん? こんな時間に? 」

 忍が時計を見ると23時を回っていた。

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