逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

 樹利亜は携帯を見ると震えだした。

「どうした? 」

 忍が声をかけても、携帯を握ったまま樹利亜は震えている。


 忍は樹利亜の携帯を覗き込んでみた。


 着信が芹亜となっている。


「ちょっと貸してみろ」


 忍は樹利亜から携帯を取り上げると、電話に出た。


(ちょっと! いつまで待たせる気? 何してるの! 今どこにいるの? )


 怒鳴り声が響いて、忍は思わず電話を耳から離した。


(樹利亜! 聞いているの? 早くお金持って来てよ! ずっと待ってるのよ! こないなら、あんたの家まで行くわよ! いいの? )


 電話越し聞こえてくる声に、樹利亜は怯えているようだ。


(樹利亜! 黙ってないで返事しなさい! あんたがくれないなら、これから家まで行くから! )


 ものすごい勢いで怒鳴っている声に、忍は驚く反面、樹利亜が怯えていることに納得した。


「…お前、誰? 」

 ちょっと低いトーンで忍が尋ねた。

(ん? もしかして、あんた樹利亜の結婚相手? )

「ああ、だったらなんだ? 」

(もの好きよね。ブサイクなんかどこがいいの? 私の方が、よっぱどいいのにねぇ)

「くだらない事はいい。お金が欲しいなら、家に来ても構わない。だが、今後一切、樹利亜にお金をたかるな! 」

(ふーん。そっ、じゃあそうするわ。あなたが私に、お金をくれるって事ね? )

「俺にそんな義務はない。あんた、それでも樹利亜の姉なのか? 」

(そうよ、私は樹利亜の姉よ。あんなブサイクより、ずーっと綺麗な姉よ)

「それがどうかしたのか? とにかく、これ以上お金を要求するなら。こっちにも考えがある」

(あっそ、じゃあ樹利亜に伝えて。お父さんに会って来るってね)

「お父さん? 」

(そうよ、お父さんに会って来るっていえばわかるわ。じゃあね)


 電話は切れた。


 樹利亜はすっかり怯えている。
 
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