逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
「あんたが社長? 」
タバコを吸いながら芹亜が尋ねた。
「はい、社長の宗田です。私に何が御用でしょうか? 」
「…座ったら? 」
見下し目で優輝を見て、芹亜は自分の前に座るように指さした。
優輝は芹亜の斜め前に座った。
「話はお金の事。妹の樹利亜が、あんたの息子? よね? 結婚したって言ってたから。樹利亜は私に、一生お金を貢ぐ事になっているの。それが、数週間前からずっと滞っていてるから。樹利亜の旦那が、お金が要るなら取りに来ればいいって前に電話で言っていたものだから。家が判らないから、会社に来たのよ。社長のあんたなら、すぐにでも動かせるでしょう? お金」
「樹利亜さんにお姉さんが居ることは、お聞きしておりますが。それ以外の事は判りかねます。金銭面の事は、何もお聞きしておりませんので」
「へえー。あのブサイク何も話していないのね」
タバコを吸い終え、2本目に火をつけ、芹亜は吸いながら優輝を見た。
「樹利亜の父親を、私が看病しているの。あのブサイクが病院に来ると、他の患者が気分が悪くなるじゃない? だから、私が行くしかないって事。それで私は仕事ができなくなった。父親の看病何てしてたら、結婚だってできないじゃない? だから、樹利亜に稼いでもらって、稼いだお金は全部もらうって約束なの。お金がもらえないんじゃ、私だって生きてゆけないじゃない? 」
父親の看病…お金がもらえないと生きて行けない…。
そう言っているわりには、随分と派手な格好をして、ダイヤの指輪もはめている。
服装も高級ブランドの服を着ている。
言っていることが矛盾している。
優輝は矛盾を感じながら黙っていた。
「悪いけど、今すぐ100万用意してくれない? 」
「100万? そんな大金を? 」
「仕方ないじゃない、数週間も樹利亜がお金を渡さないから。父親の入院費もかさんでいるし、生活費だって滞っているの。100万でも足りないわよ」
「お父様はどちらに入院されているのですか? 」
ん? と、芹亜は優輝を見た。
「そんなこと聞いて、どうするの? 」
「いえ、こちらも、一度ご挨拶に伺わなくてはなりませんので。大切な、お嬢様と息子が結婚させて頂きましたので」
「お嬢様? あんなブサイクが? 笑えるわね」
タバコをもみ消して、芹亜はじっと優輝を見た。
「教えてあげてもいいわよ」
スッと立ち上がり、芹亜は優輝の隣に座った。