逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

「それ、なんであんたが持っているの? 」


「ああ、さっきあんたがすり寄ってきた時だけど? 」

「はぁ? いつの間に? 」


「こんなもの使って、今まで男を言いなりにして来たのか? いくら、あんたが医師でも。こんなもん、普通に使ってると捕まるぞ」


「返して! 」


 注射器を取り上げようとした芹亜を、忍はひょいと交わした。


 芹亜はキッと、恐ろしい目で忍を睨みつけた。


「これ、返して欲しいなら。教えてくれる? 樹利亜のお父さんが、どこにいるのか」

「何を言い出すかと思えば。そんなんで、教えると思の? 」


「そっか、ダメなんだ。じゃあ…」


 忍は携帯電話を取り出した。

 そして、動画を再生して芹亜に見せた。


 その動画を見て、芹亜は驚いて息を呑んだ。



 動画には芹亜が若そうな男に、お金を渡して一緒にホテルに入る映像が映ていた。


「なんなの? これ…」


 驚いている芹亜を見て、忍はニヤッと笑った。


「これ、俺が頼んであんたの相手してもらった友達なんだけど。実はこいつ、、未成年なんだよね」

「未成年? 」

「そっ。わかるよな? 未成年にこんなことしたら、どうなるのか」


 余裕の顔をしていた芹亜の顔色が変わった。


「これをこのまま警察に見せたら、あんた嫌でも捕まるぜ。こいつ、まだ16歳だから」

「な、何言っているの? そんな事したら、あんたも捕まるわよ! 頼んだのは、あんただから」

「俺はただ、寂しいオバサンが居るから。ちょっと遊んであげてって、言っただけ。本人も、お茶して話すだけだって思っていたようだけど。誘ったのは、あんただろう? 」

「違うわ! どこに証拠があるの? 」


 忍は動画を消して、メールを見せた。


 そこには、芹亜と少年のメールのやり取りが残っていた。


 その内容は。

(お茶だけじゃいやよ。ホテルに行って、私と一夜過ごして)
(え? それはできないよ)
(どうして? 男と女が会ってやる事は、セックスしかないでしょう? )
(でも俺、また未成年だし)
(そんな事は、言わなきゃわからないわ。お金あげるわ、一晩3万円でどう? )
(でも・・・)
(アルバイトしたと思えば、いい事でしょう? ねっ)


 芹亜から少年をホテルに誘うメールだった。


「そんなの、デタラメよ! 」

「デタラメかどうか、調べればわかる事だ。これだけ証拠が揃えば、警察は動くから」


 悔しそうに奥歯を噛んで、芹亜は忍を睨んだ。


 忍はフッと笑った。
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