逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
嫉妬の果てに・・・
ガシッ!
忍は芹亜の手を掴んだ。
間一髪、芹亜が持っていたメスが忍の首に刺さる前に止められた。
「離してよ! 」
もがき出す芹亜の手首を、バン! と叩いて、持っていたメスを床に落とさせた忍。
芹亜は痛そうに手首を押さえた。
「今度は殺人未遂? その辺で、やめとけよ」
悔しそうに、芹亜は忍を睨みつけた。
忍は呆れたようにため息をついた。
「何してんだか。苦労して、医師免許取っても。そんな殺人に使ってるんじゃ、もったいなくないか? 」
「うるさいわね! あんたに、何が判るの? 」
「さぁ、俺には何も判らないね。俺は、人を殺したいとか、誰かを傷つけたいとか、そんな事を考えたことがないから。そりゃ、羨ましいって思う人も沢山いるし、コンプレックスを持つ事だってあるけど。俺は、自分の事嫌いじゃないから。嫉妬したり、恨んだり、そんなこと考えもしないし」
「…そうやって言える人はいいわよ。…あんたは、イケメンだから。ブサイクな人間の気持ちなんて、判らないでしょうね! 好きで、ブサイクに産まれたわけじゃないのに。顔が悪いだけで、バカにされていじめの対象にもなって。…同じ仕事してたって、みんな美人には優しくてブサイクには冷たいのよ…。あんた、そんな事されたことある? 」
忍はちょっと考え込んだ。
「悪いけど、俺はないな。顔で差別された事なんて、一度もないな。その点は、父さんと母さんには感謝しているけど」
「そうよね。…されたことないから、判らないでしょう? 私はずっと、酷い仕打ちをされてきたの。…それを見返して何が悪いの? ちょっと綺麗だからって、着いてくる男が悪いのよ! それで、飽きたら捨てるなんて許せないに決まっているわ! 」
ふーんと、忍はちょっと冷めた目で芹亜を見ていた。