逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
「それでは一方的すぎます。樹利亜さんと、直接話をさせて下さい」
「それはできません。代理人を立てた以上、本人との接触は出来ない事になっております」
「では、こちらも代理人をたてればいいのですか? 」
「と、申しますと? 」
「私も弁護士をたてれば、樹利亜さんと話しが出来るのですか? 」
「弁護士を立てる場合、弁護士が樹利亜さんと話す形はとれます。もしくは、依頼された弁護士と私が話す事になります」
忍は少し考えた。
法律家が入ってしまうと、うかつに素人が介入はできない。
無理強いすれば、話しは余計ややこしくなるだろう…。
「分かりました。では、後程ご連絡いたします。それまで、この件は保留にして下さい」
「そうですか、解りました」
澤中は離婚用紙を鞄に閉まった。
「では、名刺に書かれている番号にご連絡下さい。お待ちしております」
澤中が帰った後。
忍は暫く考え込んでいた。
弁護士までたててきた樹利亜は、本気で離婚に踏み出そうとしている。
だが…
そんな樹利亜に、忍は全く焦りは感じない。
今まで行くへが解らなかった樹利亜が、弁護士を通してでも無事であることが解った事にホッとしていた。
弁護士を通して樹利亜と繋がっていると、忍は安心感を抱いていた。
コンコン。
ノックの音に、忍はハッとした。
「忍、入るぞ」
優輝がやって来た。
「忍、弁護士さんが来ていたが大丈夫か? 」
「ああ、大丈夫だよ」
「もしかして、樹利亜ちゃんの事か? 」
「うん。離婚用紙を、早く出して欲しいって言われたよ」
悲しげな目をして、フッと一息つく忍。
「樹利亜ちゃんは、本気で離婚したいって思っているのか? 」
「そうみたいだね。今回の、お姉さんの事件でこのままでは会社にも迷惑をかけるって思い込んでいるようなんだ」
「そうか…」