逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
優輝はソファーに歩み寄り、忍の向かい側に座った。
「忍。お前には、父さんと同じことはしてほしくないと思っている。母さんと離れていた10年。ずっと、辛かったから」
「ああ、知っているよ」
「樹利亜ちゃんが、本気で離婚を望んでいるなら。応じてあげるのも、いいんじゃないのか? 」
シレっとして、忍は俯いた。
「納得できないじゃん。樹利亜から、嫌いだって言われたなら分かるけど。当然いなくなって、お姉さんの事に巻き込みたくないって言われて。俺は、そんな中途半端な気持ちで、樹利亜と結婚したんじゃないから」
「それは判る。初めは、正直驚いたよ。忍が選んだ人が、年上で…」
「あんな顔の人、良く選んだって思ったんだろう? 」
ちょっと怒った目で、忍は優輝を見た。
優輝は戸惑った目をした。
「父さんには判らないよ。俺は、樹利亜の電話を受けた時からずっと…彼女の本当の顔が、見えていたから…」
「本当の顔? 」
「ああ、声を聞いた瞬間に見えたんだ。実際会ってみると違ったけど、そんな事はどうでもよかったし。俺のハートが動いたのは、樹利亜だけだったから」
ちょっと照れたような忍に、優輝はなんとなく可愛い思いを感じて笑えてきた。
「そっか、そうだったんだ。忍は、昔から視えないものが見えていたからね。やっぱり、希歩が言っていた通りなんだな」
「母さんが? 何を言っていたの? 」
「樹利亜ちゃんを見て、なんか違うって言っていたんだ。どう見ても、違和感があるから。何か作られたような、感じがするって言っていた」
「作られた? 」
作られたと聞いて、忍は思い出した。
芹亜が言っていた事を。
樹利亜が寝ている間に、無理やり整形したと…。
希歩も身を護る為に整形している。
だから樹利亜の整形を感じ取ったのかもしれない。