逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
希歩はじっと女性を見つめた。
見つめられると、女性は辛そうに伏せていた目を潤ませた。
「…もういいのよ。何も心配しなくて。…もう、終ったでしょう? 全部」
そう言われると、女性はギュッと口元を引き締めた。
「貴女はもう、愛されていいのよ。そして、これからは自分の事を一番に大切にしてあげて欲しいの。ねぇ…樹利亜ちゃん」
名前を呼ばれると、女性はドキッとして驚いた目をした。
「初めから気付いていたわよ、貴女が本当はとっても綺麗な人だって」
「…どうして分かったのですか? …全然違うのに…」
女性は観念したように、樹利亜であることを認めた。
「私ね、実は整形しているの」
「え? 」
樹利亜は希歩を見た。
特に整形しているようには見えない希歩の顔に、樹利亜は何も違和感は感じなかった。
「私、結婚する約束をしていたんだけど。ありもしない事を、メールで流されてしまって。一度、死のうとしたの」
そっと袖をまくって、希歩は手首の傷跡を見せた。
かなり年月が経過しても、傷跡ははっきりと残ったままである。
その傷を見ると、樹利亜は胸が痛くなった。