逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
「なに? どうかしたの? 」
樹利亜はちょっと言いずらそうな顔をした。
だが呼吸を整えて、真っすぐに希歩くを見た。
「私、今のこの顔が本当の顔なんです」
「え? 」
「忍さんとお会いした時は、整形させられていた顔でした。もう数年経過していますが。姉の芹亜に寝ている間に、勝手に整形されてしまったのです。朝起きて、びっくりして…。そのせいで、弁護士の仕事もできなくなり。元に戻すにも、お金がなくてずっと姉の言いなりになっていたのです」
「そうなのね…。でも、どうやって戻ったの? 」
「それが、私にも判らなくて。…忍さんが…」
樹利亜はちょっと赤くなって俯いた。
「…忍さん。…あんな酷い顔の私でも、愛してくれて…。心も体も、とても満たされて夢なら冷めないで欲しいと思ったくらいでした。…それでも、姉が何をするか判らなく怖くて。…逃げ出してしまったのです。…もう、十分幸せだと思ったので。…忍さんは、将来を期待されてた人だから。私なんかが足を引っ張る事は、したくないと思ったんです…。でも…」
樹利亜はそっと、お腹に手を当てた。
「忍さんの下を離れてから、数日して。何か顔がいつもと違うと感じて、ずっと見るのが怖かった鏡を見てみたんです。そうしたら、顔が元に戻っていて。これこそ夢だと思いました。…でも…ずっと変わらなくて…奇跡が起こったのだと思って…。だから、この顔が元の顔なんです」
「分かったわ。きっとそうね、今の顔が貴女らしいもの」
「はい…」
希歩はそっと、樹利亜の手に触れた。
樹利亜はハッとして希歩を見た。
「忍との離婚、少し考えてもらえないかしら? 貴女の家族の一件くらいで、宗田ホールディングは潰れたりしないわ。私の時だって、もっと大変だったけど。どんどん会社は大きくなっているのよ。心配しなくて大丈夫よ」
「…分かりました。…少し、考えさせて下さい…」
「良い返事を待っているわね」
「はい…」