逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
運命の人だから
それから1週間後。
希歩は樹利亜と会ったことは忍には話していない。
樹利亜が自分で答えを出すまで待つ事にした。
勿論、澤中にも話していない。
今日は土曜日で休日。
忍はふらりと散歩をしていた。
普段あまり歩くことがない駅裏通りを歩いて、川の流れる橋の上にやって来た忍は一息ついた。
何となく来てしまった場所。
駅裏通りには病院が多い。
内科や歯医者や耳鼻科や外科、そしてレディースクリニックもある。
ここのレディースクリニックは、希歩が忍の弟の幸太を産んだ病院である。
一度改装はされているが、今でも数多くの患者が利用している。
橋の上で忍が一息ついていると…。
ふと見ると、前方から樹利亜が歩いて来た。
忍は目を見開いた。
あの携帯の写真の樹利亜に間違いないと確信した忍は、樹利亜に歩み寄って行った。
歩み寄ってきた忍に気づいた樹利亜は、驚いて立ち止まった。
「樹利亜…」
今にも泣きそうな忍の顔を見ると、樹利亜は驚いて持っていたバッグを落としてしまった。
樹利亜の傍に来ると、忍の頬に涙が伝った。
「樹利亜…もとに、戻ったんだね。良かった…」
樹利亜を見て忍は泣き出してしまった。
「俺には…初めから、樹利亜のその顔しか見えていなかった…。あの電話を受けた日に…見えていたんだ。…」
「電話で? 」
驚く樹利亜の声が震えていた。
「ああ。…実際に会ったら違ったけど、ちゃんと…分かったよ…。だから…俺は、なにも気にしていないと言ったじゃないか…」
樹利亜は観念して俯いた。
忍は樹利亜が落としたバッグに気づいて、散らかってる中身を拾ってバッグに閉まった。
「ん? 」
バッグの傍に落ちていた一枚の紙を拾った忍。
その紙を見ると、忍の顔色が真っ青になった。