逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~
「冷やしたらだめだろう? 」
「…はい…」
忍が着せてくれた上着はとても暖かく、懐かしい忍の匂いがして樹利亜は嬉しくなった。
「今、どのくらいなんだ? 」
「もうすぐ10週目です」
「じゃあ今が大切な時じゃないか。ちゃんと安心して、子供を産めばいい。俺もいるし…戻って来てくれるか? 俺の下に」
「はい…」
素直に返事をする樹利亜を、忍はそっと抱きしめた。
「一緒に行こうか」
「え? どこに? 」
「先ずは病院。ちゃんと産む事、言わないとな。それから、弁護士さんの所。離婚はしない事、話さなくてはならいだろう? 」
「はい…」
そっと、樹利亜の手を取って、忍は微笑んだ。
その後。
樹利亜は忍と一緒にもう一度病院へ行った。
駅前のレディースクリニック。
人口中絶は断り、出産することを決めた事を話して、分娩の予約をしてもらった。
予定日はまだ確定ではないが、来年の夏の予定と言われた。
次回は母子手帳をもらってきて下さいと言われた樹利亜。
エコー写真を見て、樹利亜はとても喜んでいる。
まだ小さな豆粒より大きめの胎児。
性別もハッキリしていないけど、忍と樹利亜の命を受け継いで来てくれた赤ちゃんを、とても愛しく感じている。
もし、今日、忍と会わなかったら赤ちゃんはいなくなっていたかもしれない。
運命の人と忍は言った。
確かにそうなのかもしれない。
会うべくして出会った人だと思えるから…。
樹利亜は澤中に電話をして事務所に行くと話した。