【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「……っ」
肩で息をする葵くんに目を奪われる。
「驚いたなぁ。葵くんが急に来るなんてね?」
顔色ひとつ変えない八雲先生が笑った気配がする。
「葵くん、怖い顔してどうしたのかな?」
そんな八雲先生を、私の前に立った葵くんがどんな表情をして見ているのかわからない。
……けれど、
「当然でしょ?雨野になにかあったら困るんだよね」
微動だにしない葵くんの声は驚くほど低くて。
それは葵くんが護衛で、私が依頼人の娘だから……。
それ以上でも、それ以下でもない。
そのことに、胸がきゅーっと音をたてる。