【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
*近づく距離
***
ザァーっと激しさを増している雨音。
葵くんと一緒に外に出るとやっぱり雨は降り出していた。
朝は暖かったのに、ワイシャツだけじゃ今は肌寒い。
だけど、先ほどまで繋がれていた手のひらは、葵くんの温もりがまだ残っている。
「なにしてんの?入んなよ。傘ないんでしょ?」
先へ歩き出した私に、葵くんが言う。
「でも……」
「これ以上濡れたら風邪ひくだろ」
葵くんの言う通り、ホントにこれ以上雨に打たれれば風邪をひきそうだ。
「早く」
そう言って、葵くんは私のそばまで来ると傘を広げて中に入れてくれた。
澄みきった青空みたいに優しい色をしたブルーの傘。
「……ったく」
学校から出てしばらく歩いたところで、ようやく葵くんがこちらへと振り返った。