【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
────ガチャッ!
突然ドアが開いたせいで、彼の整ったとしか言い様のない顔が視界を埋める。
「ちょっと……!?」
「なんで閉めるの?荷物入れていい?」
……いや、これ住居侵入罪なんですけど。
キャリーケースをグイグイ玄関へ押し込める彼のキャラメル色の髪が揺れた。
いやいや待って、だからなにしてんの!?
「……な、なんで葵くんがいるの!?」
ムキムキマッチョはどこへ……?
「なんでって、栄一(えいいち)さんから聞いてないの?」
それはお父さんの名前だ。
なぜそれを……?
「待って……頭が、ついてかないんだけど……」
「ねぇ。俺の部屋どこ?」
……俺の部屋って、人の話し聞いてる?
自分の家がわからなくなったとかではない?