【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「私も……先生と同じです。忘れられないことがあります。だから、先生の気持ちが少しわかります」
誰にだってそういう記憶はあるものなんじゃないかなと思う。
「ありがとう。どうしても、あの時アイツの顔が頭を過ぎってね」
「……え?アイツ?」
「……あ。やべ。口が滑った」
なに言ってんだ俺、と八雲先生は慌てて口許を抑える。
わあ……!!
いつも冷静沈着な八雲先生でもこんな顔をするんだ。
「もしかして、恋人……ですか?」
ついついそんな質問が口をついて出た。
先生に対して失礼だったかも……。
けど、洗練されたとしか言い様のない抜群の容姿を持っている八雲先生に、彼女くらいいてもおかしくはないし……とひとり言い訳を並べる。