【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「だから、誰も憎まないで。俺も一緒に背負うから」
真っ直ぐに放たれた声に、私は葵くんの胸の中から顔を上げる。
「どうして……っ、なんで、葵くんはお父さんのことを……」
ここにやってきた時から葵くんはなにひとつ私に聞いてはこなかった。
一心に、お父さんのことを信じていると言ってくれた。
それは、どうして……?
「俺は……栄一さんに助けてもらったんだ」
「え……?」
お父さんが葵くんを助けた……?
「いつか、雨野にも聞いてほしい」
ふたりの出会いがどんなところで起きていたのか、本当は今すぐにでも聞きたくて。
けど、眉を下げた葵くんの柔らかい表情に、私は静かに頷いた。
「だから今度は俺が支えたい。絶対に雨野を守るって約束したから」
“守る”……。
幼き日に聞いたお父さんの声が木霊する。
────“男の子はね、いつかみんなヒーローになるんだよ”