【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「私は、いつも楽しそうな海ちゃんが好き。動画見て笑って、ふざけて冗談言ってきて……そんな海ちゃんが、好き」
「……ちょっと、どうしよ。女子に告られたんだけど」
イケメン以外恋愛対象外なのに、なんて独り言みたいに笑う海ちゃんが、私は好きだよ。
嗚咽をもらし始める私に、
「こんなわたしだけど、空のそばにいてもいい?空の抱える苦しみをわたしは全部知らないし、助けてあげる方法もわからない。だけど、これ以上空が苦しまないように、そばに寄り添う自信はあるよ?」
生地を流し込んだカップケーキをオーブンに入れると、海ちゃんが花咲くように笑ってくれた。
「海ちゃんがいい……隣にいてほしい。また自撮りならいくらでも評価するから、海ちゃんがいいよ……」
いよいよ涙と一緒に鼻まで垂れてきた。
「えー、交際期間1ヶ月でもうプロポーズ?だったら結婚する?」
「するぅ……」
「あー、空はイケメンじゃないのでお断り致しますわ」
海ちゃんはやっぱり海ちゃんらしく冗談っぽく言いながら、エプロンのすそで私の鼻を拭いてくれた。
────海ちゃん、ありがとう。
今日流した涙の温かさを、私はきっと、ずっと忘れないと思う。