【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
今は私の護衛としてここに住んでくれているわけで。
そもそも、私と葵くんの関係は依頼人の娘と護衛……。
「甘……」
「えっ?」
弾けるように顔を上げると、葵くんはもう既にカップケーキを食べていた。
「分量間違えたの?」
「い、いや……だからこれは海ちゃんが砂糖足しちゃって。これでも甘党代表者の海ちゃんとしてはまだ足りないくらいで……」
「甘党すぎだろ、雪永」
ぷっ……と笑った屈託のない笑顔に、胸がキュッと音をたてる。
「あの、無理に食べなくていいからね?」
「は?」
「だって、すごい甘くて虫歯になるレベルだよ……?」
それこそ胸焼けするかもしれないくらいだと思うし……。
「もったいないだろ?」
「私も食べ物は粗末にしないことってお父さんに言われてきたけど、これは……」
「違う。お前が作ったのに、食べないわけないじゃん」
「……っ」
葵くんはパクパクと袋に入っていた最後のカップケーキ食べ終えた。
ダメだ、そんなこと言われたら嬉しくなる。
「葵くん、ダメだよ……っ」
私は……やっぱり葵くんに異議申し立てをすることにした。