【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「……頼もしくなったわね。本当に」



どこか懐かしそうに、そして穏やかに呟いたお母さんの声。


葵くんも同じようにお母さんを見ていた。



まるで、お母さんはずっと昔から葵くんのことを知っているみたい。



「空のこと、よろしくお願いします」



頭を下げるお母さんに葵くんはしっかりと頷いていた。



「お父さんが退院したら、すぐに帰ってくるからね」


「うん……私も、体育祭頑張るからってお父さんに伝えてね!」



荷物を詰めたボストンバックを手にしたお母さんを私は見送った。



私はその場で、葵くんがここへやって来た日から今までのことを思い返していた。



お父さんが一番信用しているひと……。


葵くんもまた、ずっとお父さんを信じてくれていて……。



「お母さん!待って……!」



玄関を飛び出して階段を駆け下り、お母さんの背中に叫んだ。

< 242 / 300 >

この作品をシェア

pagetop