【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
それは、先ほど負けないと宣言した八雲先生と葵くんがアンカーで、スタート位置に並んでいるからだ。
気だるげに駆け出した葵くんと、涼しい笑みを浮かべる八雲先生。
葵くんが、どうか爆弾を引き当てませんように……。
そう祈ったのも虚しく、葵くんはお題が書かれたカードをずっと見つめている。
「もしや、葵くん爆弾引いちゃった!?」
海ちゃんが言うように他の走者はあちこちへ借りに行っているっていうのに、葵くんだけは取り残されている。
「きゃあ……!!!」
そんな中、余裕をかもしだすかのように、八雲先生はこちらへと走ってくる。
「学年カラーのハチマキなんだけど」
と、待機場所で足を止める八雲先生の汗が眩しく光る。
バッ───!!と、八雲先生に差し出される女子のハチマキの数々に圧倒される……。
「雨野、貸してくれない?」
「……え?」
八雲先生は迷うことなく私を見て言った。