【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
わ、わたしのハチマキ……?
「お願い」
八雲先生が動けず座っている私へ手を差し伸べた瞬間、
「────ダメ。あんたに雨野はあげない」
青空から、声が降ってくる。
誰もが、肩で息をする葵くんの姿に目を奪われた。
「ちょ……っ、葵くん!?」
そう言ったときには、葵くんに手を掴まれ引き上げられていた。
なんで……なんで、葵くんが?
「お前しかいないんだよね」
そう言って、太陽よりも眩しく笑う葵くんとゴールを目指して駆け出していった。
だから当然、
ただただ必死に走り続ける私と葵くんの背中に
「────本当、目障り」
地を這うほどに低い声が聞こえているわけもなかったのだ。