【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「はぁっ、はぁっ……あ、葵くんこれ。どういうこと……?」
無我夢中で走り切って、なんとかゴールテープをくぐったけれど。
「あ、2位だって。やっぱり本気出せばよかった?」
「聞いてる……!?」
放送委員のスピーカーから流れる声に、私達のクラスはどうやら綱引き同様2位だったんだけど。
「俺、爆弾ってやつ引いたらしい」
「たぶんそうなのかなって思ったけど……っ」
なんで、私だったの……?
呼吸を整えながら、不思議そうに葵くんを見上げる。
「だから、お前しかいなかったから」
「こ、これって……」
ほんのりと頬を赤く染めた葵くんが、爆弾のカードを見せてきた。
めんどくさいって言ってたくせに……。
“ 守りたいひと ”
護衛である葵くんにピッタリなお題。
「……な、なるほど。護衛だもんね!」
事実、私は葵くんに守ってもらっているわけだし。
嬉しいような、素直に喜べないような変な気持ち。
「護衛だからってだけじゃないよ」
「……え?」
まるで私の心の声が聞こえたみたいに、葵くんは言った。
「でも今は内緒」
「っ、」
その答えを聞きたいって顔に出てしまっていた気がして、恥ずかしくなる。
葵くんの涼しげな笑みに胸が高鳴っていく。
きっと、私は葵くんのことが───。