【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


もうどこからどう伝えたらいいのかわからなくて、必死に言葉を絞り出す。



「電話?きていないよ?」


「え?じゃあ、もしかしたら……お、お母さんがかけたんじゃ……っ」


「お母さんなら、退院手続きをしてくれているよ」



あぁ、今日お父さんは退院出来る日なんだ。


胸を撫で下ろしたのもつかの間。



「話が見えないけど、学校から電話がきたことも、かけたことも一度もないよ?」



え………?


連絡が、一度もきていない?


だって今も、八雲先生が……。



あれ?


“ お父さんが ”……と、そう言われて私は慌ててここまで走ってきて。


だけど、怪我をしたとも、ましてや倒れたとも言われてはいない。



あれ……なにかが、おかしい……。


胃の底が浮くような嫌な浮遊感に襲われる。

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