【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「……っ、」
突き刺さる、あの視線。
「もしもし、空?どうし───」
大好きなお父さんの声が遠ざかっていく。
次の瞬間、私の手から奪われた子機からピッと電子音が鳴った。
ゆっくりと、震える身体を動かして、私は後ろへ振り返る。
「お父さん、元気そうだね?」
ニコリ、と微笑みを作る八雲先生が真後ろに立っていた。
あっ、と口の中で叫んだけれど遅かった。
どうして、私は今の今まで気づかなかったんだろう。
────“……どういたしまして。入院中に申し訳なかったね”
八雲先生はそう言っていたけれど、お父さんの入院のことを知っているのは、葵くんと海ちゃんのふたりだけだ……。