【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「せ……せん、せい?」


「よかったよ。雨野のお父さんが無事で」



穏やかに聞こえる八雲先生の口調はどこか芝居がかっていた。



「俺も心配していたからね」



ふと目を上げて、刺すような瞳に息をのんだ瞬間、



「────なんて言うとでも思った?」



今まで聞いたこともないような、ひどく冷たい声。


八雲先生の瞳の奥に、ゆらゆらと、悪意が浮かび上がった。



────“悪い人は、目を見ればわかるんだ”



お父さんの言葉は、いつだって正しかった。

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