【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「なんで、八雲先生が……」



私はその場で声を発するのがやっとだった。



「なんで入院していることを知ってるかって?ずっと見ていたからだよ?」


「え?」


「以前助けてもらったお礼をどうしてもしたいって伝えたら、交番勤務の同僚か知らないけどあっさり教えてくれたよ。勤務地のことも、今は入院中だってこともね」



お父さんの仲間は意外と口が軽いみたいだね、と付け足して笑った。



「違う……」



それはきっと、お父さんの耳に入ったのだろう。



わざわざ自分を尋ねてくれたひとへのせめてもの誠意で、お父さんが知らせてほしいと言ったに違いない。


私は、誰よりも警察官として誇りを持ち、ふれあいを大切にしてきたお父さんの姿を知っている。

< 267 / 300 >

この作品をシェア

pagetop