【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「あはは。なにが違うって?ずっと見てたのに、雨野は全然気づいてもなかったくせに」
ずっと……私を見ていた?
────“俺が、雨野のこと見てたから目が合ったんだよ?”
────“わざとでしょ?最初から雨野のこと見てたから、アイツ。だから俺も警戒してる”
頭の中で、八雲先生と葵くんのいつかの声が木霊する。
「先生が、私のことを見てた……?」
なにかの間違いであってほしい。
夢なら、今すぐ覚めてほしい。
「なに言ってんだよ。雨野空。警察官の雨野栄一の娘。何度もお前の顔を確認したから、間違っていないはずだよ?」
ほら、とデスクの上に置かれた八雲先生のファイルから一枚の写真を取り出した。