【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
*出逢うことは、運命で
静寂に包まれた部屋の中で、八雲先生の声が、悲しく零れ落ちた。
同時に、あの日のお父さんの無念の声が耳元で聞こえる。
────“助けられなかった”
目を見張ったまま八雲先生を見つめる。
「大切なひとを失う気持ちが、お前にわかるか?雨野空……」
「……ち、違う。見捨てたりなんか……っ」
「もう助からない。そう思って、見捨てたんだよ。お前の父親は俺の妹を───“ 晴花 ”を」
晴花……とその名前を心の中で繰り返した。
遠い記憶を呼び覚ます。
記者に囲まれ責め立てられているように見えた、あの頃のお父さん。
そこに飛び込んできた、悲しい声。
私はその時のことを、彼女の名前を、しっかり覚えている。
「入学式で雨野を見た時、憎しみと悲しみで押し潰されそうだった。晴花は冷たい雨の中死んでいったのに、なんで……あの男の娘は、お前は……笑ってるんだって」
八雲先生は私の肩を両手で強く掴んだ。
「晴花と同じ制服を着て───」
え……?
同じ制服……?