【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



振り払おうとする八雲先生の手を、私は握る。



「葵くんは、お日様みたいなひとです……」


「お前、なに言って……っ」



ギュッ、と八雲先生の手を両手で握りしめる。


情けないくらいに手が震えている。


どうしてこんなことをしているのか、自分でもわからないけれど。


でも、葵くんはいつもこうやって、私の手を握ってくれた。


その度に、葵くんの優しさが伝わってきた。



“ 陽向 ”……。


名前の通り、太陽みたいに温かくて、冷たい雨から私を守ってくれた。



────“お前はそうやって泣いていいんだよ。俺の前で、我慢すんな”



いつだって、私の隣にいてくれた。



────“俺がいるから大丈夫”



その優しさを同じように返したいと思った。



────“憎しみは、自分に返ってくるよ”



息をするのも苦しくて、耐えきれないときも、そっと寄り添ってくれた。


葵くんがいたから、私は前を向けた。



────“俺も。お前が笑ってる顔見れて嬉しいよ?”



目を閉じれば、太陽よりも眩しい葵くんの笑顔が浮かんでくる。



────私は、葵くんのことが好きだ。



こんなにも好きで、好きで……。

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