【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


「憎しみは、自分に返ってきます……」


「っ、」



八雲先生は、自分を見失うほど苦しんできたんでしょう……。


ずっとずっと、その苦しさをどこに吐き出したらいいかわからなくて。



だけど。



「憎んで、責め続けて……先生は、それでもずっと苦しいでしょう……?」



それで楽になれるならいくらでもする。


けれど、先生の心に降り続ける悲しみの雨は、止むことはなかっただろう。



「……なんで、助けてくれなかったんだよ」



零れ落ちた声はきっと、八雲先生の本当の声だ。



「まだ……晴花は、16歳で」



大切な人を思い出す八雲先生の瞳が滲んでいく。


どれだけ時間が経とうとも、受け入れるはずもない。


大切な人が、死んだなんて。


もう二度と、会えないなんて。



「お前に、なにがわかる……!」



八雲先生が叫ぶ。


じっと私を見据える。


私の声は、八雲先生にはもう届かない。


そう思った直後……

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