【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


葵くんは、ずっと握り続けた手のひらを、そっと開く。



「……っ、」



驚いた八雲先生は、声も忘れてそれを見つめていた。



丸い形をしたストラップが見える。


血のついた、そのストラップから思わず目を背けたくなった。


けれど、そのストラップには、こう書かれていた。



“ お腹に赤ちゃんがいます ”



「────これは、母さんの宝物だから」



お父さんが救った命は、ひとりだけじゃなかった。

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