【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


……この1ヶ月。


きっとこんなにも長く感じる1ヶ月は、人生で初めてだ。



あの雨の日の事件を通して私達は傷ついて。


苦しくて、もがいて、その日を生きることで精一杯で。



だけど、たったひとつ。


誰かを愛する気持ちだけは同じだった。



私達が出逢うことは必然で、運命だったんじゃないかな。



私がそれをポツリと口にすると、



「雨野が言うなら、運命だったんじゃない?」



葵くんは抜けるような青空を見つめて、少しだけ笑った。



「───俺がいなくて、寂しい?」



不意に、葵くんが私の顔を覗き込んでくる。



「……そんなこと、ないよ」



胸のうちを悟られたみたいで、急に恥ずかしくなる……。

< 293 / 300 >

この作品をシェア

pagetop