【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?



「雨野」


……と。


葵くんの優しい声にゆっくり目を開く。


私の頬をそっと両手で包み込んだ。



あ、やばい……呼吸が近い。


もう唇が触れてしまいそうな距離に、ドキドキと加速を増す鼓動。



「おーい!アマゾラちゃーん!」



その時、遠くから私を呼ぶ声が飛んできた。



ビックリして、声のする方を見上げると、



「綱引き2位だったから、景品もらえるらしいよー!あとでアマゾラちゃんもおいでよー!」



隣のクラスの窓からこちらを見て元気よく叫ぶのは、水道で声をかけてくれたあの子。


私が大きく頷いて手を挙げると、ニコリと笑ってくれた。



「へぇ。相変わらずアマゾラちゃんなんて呼ばれてるんだ?」


「い、いいでしょ別に。私は今じゃ結構、気に入っ……」


「ごめん。もう待てない」



その言葉とともに、私の視界は葵くんでいっぱいになった。



それは、


私の唇を葵くんが塞いでいたから。

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