【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
栄一さんの娘がどんな奴なのか、寝たふりして観察してたなんて雨野は知らない。
本当に寝て過ごすこともあったけど、寝るよりも先に、気づけばいつでも目で追っていた。
後ろの席になってから雨野に不審なことが降りかかっていることを知った俺は、栄一さんと連絡をとった。
“機密事項”……。
そう言ったら雨野は納得のいかない顔で理由を知りたがっていたけど。
それを話せば、雨野の傷に触れるような気がした。
だから、本当のことは、今はまだ言わない方がいい。
「ん~~…」
暗闇に目が慣れて、こっちに寝返りを打った雨野の華奢な身体がどこに位置するかがわかる。