【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
なに言ってんの?とでも言いたげな顔で、葵くんがこちらを見ている。
逃げるように文庫本へ視線を走らせようとしたけど、それよりも早く葵くんの声が追いかけてきた。
「八雲と二人きりになったら許さないよ?わかったの?」
「……は、はい」
葵くんの不敵な笑みに思わず敬語になってしまった。
八雲先生とは個人的な関わりなどないけれど、不審なことが起き始めている今、私も今以上に危機感を持たなきゃ……。
「あ。それと、夜更かしすんなよ?」
「ちゃんと、寝るってば……」
「それから、腹出して寝んな。風邪ひく」
「………お腹!?」
「昨日の夜もへそ見えてたよ?」
「えーっ!?」
……って、嘘でしょ?
そんな姿を葵くんに見られてたの……?