恋のお話。
先生の説明に熱が入って、板書のペースが早まっていく。書いてはさっさと消されていくから、頑張らないと追いつけない。

(ここ、ポイントだから赤で…よし。やりきった!)

先生が教科書を読み始めて、一旦板書のピークが終わった。赤のマジックペンのキャップを閉めて、私は1人達成感でため息をついた。

「和田。」
「何?津野くん。」

今度はちゃんとこっちを見ている。でもなんだか神妙な顔だ。

「…悪いんだけど、ノート見せて。」

あ、すごく苦い顔。私に頼み事をするのが嫌だったらしいけど、背に腹は変えられなかったらしい。

「いいよ!どうぞ!」

津野くんが嫌がっていても気にしないもんね。津野くんに対して、私は満面の笑みでノートを差し出した。

「…悪い、ありがとう。」

ボソッと今まで以上に小さい声で呟いて、津野くんはノートを写していく。
私は見つめる大義名分ができたから、遠慮なく津野くんを眺めていた。

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