冷酷王子は子リス姫を愛でる
そんなヤツを、俺が愛せるわけがない。



「酒はあるか?」

「えぇ、ワインとブランデー、私の国で作っている果実酒もございますよ」

「ブランデーを」



いくら飲んでも、酔ってはくれない。



泥酔でもして、記憶がなくなればいいのに。



マリアンヌがキャシーに見えるくらい酔いたい。



そんな奇跡でもないかぎり、この女を抱ける気がしない。



「あつっ…」

「酔われてしまいましたか?」



上目遣いで、太ももの上に置かれた手。



誘われてることは、痛いほどわかる。



食指が動かない。



なのに、体が熱い…。



あぁ、盛られたな。



媚薬の類だろう。



「アンドリュー様っ⁉︎」



マリアンヌの腕を掴んでベッドに放り投げた。



俺を謀るとは、どこまでも能天気な女だ。



マリアンヌの上に馬乗りになり、首に手をかけた。



「なっ、んでっ…」

「何を入れた?」

「なに、も…」

「お前は俺を誰だと心得る」

「アンドリュー…様…私の…愛すべきお方です…」

「お前なんかが俺を手に入れられるとでも?」



手に力を入れると、カタカタと震え始めた。



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