冷酷王子は子リス姫を愛でる
考えなきゃいけないことは沢山あるのに…。



「お湯を水に変えるなんて、ムリだしな…」



なんて、独り言が口から出てしまった。



頭を撫でられていたキャシーが顔を上げる。



「お湯は水になりますよ?冷めてしまえば水です」

「違うのだ。湧き出る水がお湯なのだ。飲めはしても、魚を育てることはできない」

「それって…温泉じゃないですか?」

「温泉?」

「あの、前の記憶?で、温泉に近いところに住んでたんだと思うんです。この世界では浴槽があまりないのですよね?マリーナルにも、私の部屋にしかありませんでしたし」



浴槽に毎日入る習慣は確かにない。



魔力石を使ったシャワーで済ませるのが一般的。



キャシーは風呂が好きなだけかと思っていたのだが、どうやら前世が関係しているようだった。



「温泉って、大きなお風呂なんです。前に行った港町にあった入浴施設みたいな」

「他人と入る風呂か…」

「えっと、そこに宿泊もできて、体にいいお湯にも浸かれて、さらにご飯も食べられる。温泉は癒しを求めた人がたくさん来るのですよ」



それは、ものすごく名案なのではないだろうか。



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