人魚のお姫様
「恥ずかしいのであまり見ないでください」

エラは、妖精のような薄い水色のドレスを着ていた。花がたくさんついている。

「妻となる女性を見て何が悪い?」

ディランはそう微笑み、エラの頰にキスを落とす。ディランに触れられるたびに強引なキスを思い出し、エラは頰を赤くしてしまうのだ。

「何だ?口にしてほしいのか?」

「大丈夫です!」

意地悪に訊いてくるディランから顔をそらし、エラは大広間へと向かう。ドレスに着替えさせられた以上、もう引き返すことはできない。

さっさと負けて帰ろう……。そうエラは思っていた。この勝負で王妃に認められなければ、さすがにディランも諦めるはずだ。

大広間は、さらに豪華な造りになっていた。シャンデリアの輝きが眩しく、エラは目を細める。

大広間には、ピンクや黄色、オレンジや青など様々な色のドレスを着た王女が集められていた。誰もが一番に輝こうと着飾り、美しい。エラは自分がここにいることが恥ずかしくなった。
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