人魚のお姫様
「失礼ですが、この家のお嬢様でしょうか?」

エラの近くにいた男性が訊ねる。エラは「はい」と戸惑いながら頷き、「失礼ですが、どちら様ですか?」と訊ねる。すると、ソファに座っていた男性が立ち上がり、エラの目の前に立った。

「やっと探したぞ」

男性に見つめられ、エラは「えっ?えっ?」と何度も呟く。男性の頰は赤く染まっていた。しかし、エラはこの男性をーーー。

「まさか、覚えてねえのか?」

男性がエラに訊ねる。エラは「初対面ですよね?」と聞き返した。男性はため息をついたものの、エラを再び見つめる。

「俺はディラン・インガム。お前を嫁にするために来た。今すぐ、俺と結婚しろ」

「はい!?」

いきなりそんなことを言われ、エラはますますわけがわからなくなる。しかし、ふと懐かしい記憶が蘇ってきた。

「えっ……?ディランってあの?」

やっと思い出したか、とディランは安心したように微笑んだ。

「そう。お前が小さい頃によく遊んだディランだ。まあ、今はこの国の王子だがな」
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