人魚のお姫様
「またあとで案内する。でも、どこかへ行きたい時は俺を呼べ。迷子になったらいけないからな」

ディランはつないでいた手を離す。やっと離れたとエラがホッとした刹那、ディランはエラの腰に素早く腕を回した。

「ひゃっ!」

驚くエラを見て、ディランは意地悪そうな顔をしている。エラの反応を明らかに楽しんでいた。

ディランにどこに連れて行かれるのかエラが不安になっていると、「ディラン!!どこに行っていたの!!」と怒鳴り声と数人の足音が聞こえてきた。

エラが振り向くと、王宮の使用人数名と上品なミントグリーンのドレスを着た女性がやって来るところだった。女性の歳は、おそらくエラの母と変わらないだろう。

「今日は各国の王女様とのお見合いだと言ったでしょう!!この国の王子は、結婚相手を見つけなければ王になれない。早く大広間に来なさい!王女様たちがお待ちになってーーー」

女性はディランに怒鳴りながら、抱き寄せられているエラを見て不思議そうな顔をする。その時、ディランが言った。
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