ハッピーアイスクリーム
「飲み物は何にする?」

「あ、私はアイスティーにする」

前払いのお店のようで、ボケボケしているうちに瞬くんが注文から支払いまでスマートに終わらせていた。

「瞬くん、お金」

席についてから私はいそいそと財布を出す。
パンケーキとアイスティーの値段はいくらだっけと店内のメニュー表を見て計算していると、瞬くんは笑いながら言った。

「アイスの代わり」

「?」

言われた意味が分からなくて、私は思いきり首を傾げる。

「ハッピーアイスクリームでしょ」

瞬くんが頬杖をつきながら楽しそうに言う。
私は一瞬にして先ほどの結婚式のことを思い出して目を見開いた。

───同時に同じ言葉を言ったらハッピーアイスクリームって言うの。先に言った方が勝ちで、負けた方がアイスを奢るっていう遊び。

「えっえっそんなっ!」

奢るのは冗談だって言ったハズなのに。

「いいからいいから。パンケーキ半分に切るね。はい、こっちが結衣ちゃんの」

断る隙を与えてはくれず、瞬くんは丁寧にナイフでパンケーキを半分に切って取り皿にのせた。当然生クリームも半分ずつで、山盛りの生クリームも器用に分けてくれる。おまけにナイフとフォークも手渡され、もう食べる準備万端だ。

「……ありがとう」

瞬くんの女子力の高さに圧倒されつつも、私はかろうじてお礼だけは言えた。

ふわふわのパンケーキとふわふわの生クリームは、口に入れたとたん甘さがいっぱいに広がって、そしてしゅわっと溶けていくような繊細さだ。美味しくて美味しくて幸せな気持ちになる。

「幸せそう」

「うん、幸せ。美味しい」

私が落ちそうになる頬を押さえながら答えると、瞬くんも幸せそうに笑った。
その笑顔がとても綺麗だなと思って、私はしばしみとれてしまった。
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