愛してる 〜必ず戻る、必ず守る〜
3話
さらに加波子は動く。
加波子は積極的に動いた。週に1度は映画館に行き、わざと毎回違う映画館を選んだ。新しい景色を見るために。
そして加波子には好きなバンドがあった。ジ・アニバーサリィ。日本のロックンロールのバンドだ。そのバンドのライヴをきっかけに、ねこ姉と庄子に出会えたのだった。
加波子に興味のあるものといえば、映画鑑賞とそのバンドくらい。そのバンドは、地味にゆらりとしか活動をしない。
CDを買い、ライヴツアーに必ず行く。ねこ姉、庄子の他3人の男友達、たまにしか会えないが、計6人のメンバーで行くのがお決まりだった。
ライブは大盛り上がり。そのままのテンションでみんなで打ち上げをする。
時には朝までいた時もあった。ファミレスで長く居座り過ぎ、働く店員のシフトが変わる。テーブルにはドリンクバーのグラスが数え切れないほど溜まる。お腹が空いたメンバーは軽く朝食を済ませ、帰る時間が来る。
人数が増えれば会話も増える。名残惜しい。時間が足りない。その思いは皆一緒だった。
そしてそのメンバーとは、ライヴではない日にも会うようになっていった。何でもない日だったり、誰かの誕生日だったり。加波子に楽しい時間が増える。
そんなメンバーとやりとりしているSNSで、1組のバンドを見つける。インディーズのバンドだった。
どんどん挑戦する加波子。ライヴへとひとり向かう。
初めて行ったハコは東新宿にあるライヴハウス。小さな小さなハコだった。ハコが小さいならではの間近で見た、ギターのカッティング、ベーシストの指弾きの指、ドラムのスネアとシンバルの叩き方の衝撃は刺激的だった。
そしてステージは期待以上にかっこよかった。なぜもっと早く知ることができなかったのだろう、もっと観たい、もっと知りたいと、加波子はライヴに通うようになった。
かっこいいバンドに次々と出会う。そしてバンドマンと仲良くなり、そのバンドマンのそれぞれの彼女、友人、知人、スタッフ。どんどん沢山の人と出会い、仲が良くなる。
ライヴのため色んな所へ足を運ぶようになる。新宿、代々木、上野、池袋、渋谷、下北沢、三軒茶屋、高円寺。どこも小さなハコだが、それぞれ独自の特徴があった。行ったことのあるハコもどんどん増えていく。
ライヴが終わった後、そのままそこでの打ち上げに加波子は誘われるようになった。そこには同じ音楽が好きな人、同じ感覚を持った人しかいない。
加波子は楽しかった。居心地がよかった。ライヴハウス内は暗いが、皆の笑顔が活き活きと輝き、辺りを明るくさせていた。しかしそこにも時間は来る。
加波子が住んでいるのは足立区。都心に住む他の人とは違い、終電が早い。そして次の日もいつも通り仕事へ行く加波子は、足立区に帰らなければならない。
加波子はいつもこっそり帰る。特に意味はなかったが、はっきりと別れの言葉を口にすることが寂しかったからかもしれない。彼ら彼女らには、また会えるというのに。
どんなに楽しい時間を過ごしても、どんなに時間を費やしても蘇る記憶。その記憶は消えない。
だが加波子はその記憶を消したいと思っていない。消えてほしいとも思わない。加波子はいつまで経っても、どうしていいかわからないままの記憶をどうにもしないまま生きていた。
置いてきぼりの記憶。
加波子は積極的に動いた。週に1度は映画館に行き、わざと毎回違う映画館を選んだ。新しい景色を見るために。
そして加波子には好きなバンドがあった。ジ・アニバーサリィ。日本のロックンロールのバンドだ。そのバンドのライヴをきっかけに、ねこ姉と庄子に出会えたのだった。
加波子に興味のあるものといえば、映画鑑賞とそのバンドくらい。そのバンドは、地味にゆらりとしか活動をしない。
CDを買い、ライヴツアーに必ず行く。ねこ姉、庄子の他3人の男友達、たまにしか会えないが、計6人のメンバーで行くのがお決まりだった。
ライブは大盛り上がり。そのままのテンションでみんなで打ち上げをする。
時には朝までいた時もあった。ファミレスで長く居座り過ぎ、働く店員のシフトが変わる。テーブルにはドリンクバーのグラスが数え切れないほど溜まる。お腹が空いたメンバーは軽く朝食を済ませ、帰る時間が来る。
人数が増えれば会話も増える。名残惜しい。時間が足りない。その思いは皆一緒だった。
そしてそのメンバーとは、ライヴではない日にも会うようになっていった。何でもない日だったり、誰かの誕生日だったり。加波子に楽しい時間が増える。
そんなメンバーとやりとりしているSNSで、1組のバンドを見つける。インディーズのバンドだった。
どんどん挑戦する加波子。ライヴへとひとり向かう。
初めて行ったハコは東新宿にあるライヴハウス。小さな小さなハコだった。ハコが小さいならではの間近で見た、ギターのカッティング、ベーシストの指弾きの指、ドラムのスネアとシンバルの叩き方の衝撃は刺激的だった。
そしてステージは期待以上にかっこよかった。なぜもっと早く知ることができなかったのだろう、もっと観たい、もっと知りたいと、加波子はライヴに通うようになった。
かっこいいバンドに次々と出会う。そしてバンドマンと仲良くなり、そのバンドマンのそれぞれの彼女、友人、知人、スタッフ。どんどん沢山の人と出会い、仲が良くなる。
ライヴのため色んな所へ足を運ぶようになる。新宿、代々木、上野、池袋、渋谷、下北沢、三軒茶屋、高円寺。どこも小さなハコだが、それぞれ独自の特徴があった。行ったことのあるハコもどんどん増えていく。
ライヴが終わった後、そのままそこでの打ち上げに加波子は誘われるようになった。そこには同じ音楽が好きな人、同じ感覚を持った人しかいない。
加波子は楽しかった。居心地がよかった。ライヴハウス内は暗いが、皆の笑顔が活き活きと輝き、辺りを明るくさせていた。しかしそこにも時間は来る。
加波子が住んでいるのは足立区。都心に住む他の人とは違い、終電が早い。そして次の日もいつも通り仕事へ行く加波子は、足立区に帰らなければならない。
加波子はいつもこっそり帰る。特に意味はなかったが、はっきりと別れの言葉を口にすることが寂しかったからかもしれない。彼ら彼女らには、また会えるというのに。
どんなに楽しい時間を過ごしても、どんなに時間を費やしても蘇る記憶。その記憶は消えない。
だが加波子はその記憶を消したいと思っていない。消えてほしいとも思わない。加波子はいつまで経っても、どうしていいかわからないままの記憶をどうにもしないまま生きていた。
置いてきぼりの記憶。