【女の事件】十三日の金曜日
第7話
翌朝のことであった。

久通は、一晩中よしえとふたりで遠方の町のラブホで夜明けまでしけこんでいた。

家の居間の食卓には、母親とあつことひろつぐだけがいた。

父親は仕事に遅れるからと言い放った後、足早に家を出発していたし、久秀も家族で朝ごはんを食べることがイヤになっていたので朝ごはんを食べずに家を飛び出して行った。

母親は、久通がふきこと離婚したいと言うて、に一方的に話し合いを切ってしまった。

母親は、ふきこは入江の家の嫁にふさわしくないと判断して、ふきことひろつぐを親類に引き取ってもらうことを決意した。

そんな時に、ふきこが祖父の介護を終えて食卓にやって来たので、やさしい声でひろつぐに言うた。

「ひろつぐくん…おかーさん用事が終わったみたいだから一緒に朝ごはん食べようね。」
「食べない!!」
「どうしてなの?おかーさんはひろつぐくんと一緒にごはん食べたいと言っているのよ。」
「ふざけるな!!ワーッ!!」

(ガシャーン!!)

ひろつぐは、あつこに向けて小皿を投げつけた後、より強烈な声であつこをなじっていた。

「ひろつぐやめて!!やめてひろつぐ!!」

ふきこは、必死になってひろつぐをなだめていた。

しかし、ひろつぐはあつこに食器を投げつけた後、祖父が寝ている部屋へ行って、もので祖父を殴り付けていた。

「死ねや!!セクハラジジイ!!」
「ワシはセクハラしていないよぉ…」
「殺してやる!!ワーーーーーッ!!ワーーーーーッ!!ワーーーーーッ!!」

ベッドに寝たきりになっている祖父は、ひろつぐが持っているプラスチックのバットで殴られぱなしになっていた。

ふきこは、ひろつぐを止めようとしていたがひろつぐからものを投げつけられた後、強烈な声でなじられてしまった。

このままでは危ないと思った母親は、馬立(四国中央市新宮)で暮らしている知人に頼んで、祖父を老健施設へ移すことを決めた。

1月23日の昼3時半過ぎのことであった。

家にはふきことひろつぐと久通の祖父の3人だけが家にいた。

この時、ご近所でもめ事が発生していた。

この時も、ふきこは浴室で祖父のお風呂の介護をしていた。

ひろつぐは、居間にいて1日中CATVのアニマックスを見続けていた。

そんな時であった。

(ドンドンドンドン!!ドンドンドンドン!!)

この時、玄関でドアを激しくたたく音が聞こえていたのと同時に、若い男性の切羽詰まった声が聞こえていた。

「助けてくれ!!助けてくれ!!アニキに殺されてしまうよ…助けてくれ!!」

ひろつぐは、浴室にいるふきこを呼びに行ったが、ふきこは『おじいちゃんの介護をしているから離れることができないの…』と言い放った後、祖父のお風呂の介護を続けていた。

しかし、翌日の午後に大騒ぎになる事件が発生した。

翌日の午後3時半過ぎのことであった。

ふきこは、久通の祖父のお風呂の介護が終わったので、ベトベトに濡れているブラウスと赤色のスカートと下着を取り替えるためにスカートの中からショーツを脱いで、ベトベトに濡れている白のブラウスのボタンを上から3つ外していた。

その時にまた、近所の奥さまが家にやって来た。

ふきこが玄関で応対していた時であったが、白のストラップレスのブラジャーがブラウスの開いている部分から見えていたのと同時に、右足に白のショーツが引っ掛かったままになっていたのを、近所の奥さまから変な目付きで見られてしまった。

近所の奥さまは、変な目付きでふきこをみつめながらイヤミをこめてこう言うた。

「入江さん…」
「はい。」
「昨日の午後に、若い男性がものすごく切羽詰まった声でおたくに助けを求めて来た時なんだけど…その時家でなにしとったん?」
「アタシは、久通さんの祖父の介護をしていました!!」
「本当かしらねぇ…」
「奥さま!!おじいちゃんをお風呂場へ残したら溺れてしまうのよ!!おじいちゃんを残して玄関に行くことができないのです!!」
「そうやってあんたーはうそついておじいさまとやらしいことをしていたのでしょ…」
「奥さま!!やめてください!!」
「変なことも言いたくもなるわよまったく…そんなことよりもね…昨日の午後におたくに助けを求めて来た男性のことだけど…あれ、ナガヤス(永易)さんカタの次男さんだったみたいよ…ナガヤスさんの次男さんねぇ…今朝方、金生川の河川敷でやくざの男7人から集団リンチを喰らった後、油をかけられて焼き殺されたわよ。」
「ナガヤスさんの次男さんが…やくざに焼き殺されてしまった…」
「ナガヤスさんの次男さんね…徳常(新居浜市)のスナックのホステスの女にてぇつけてはってねぇ…妊娠させていたのよ…そのことが原因で…やくざの親分の怒りを買ってしまったみたいよ…ナガヤスさんの次男さんは、やくざの事務所に出入りを繰り返していた上に、バクチにのめり込んでいたみたいよ…他にもね…数日前に上納金(くみのかね)を持ち逃げしていたことが明らかになったのよ…ナガヤスさんのご主人もご主人でね、観音寺のやくざだったかしら…組長と親密な関係にあるから、高価な金品をたーんともろてはったみたいよ。」
「やめてください!!奥さま!!家には病人と小さい子どもがいるのです!!恐ろしい話をしないでください!!」

ふきこは、大パニックを起こしていたのできちがいになっていた。

奥さまは、なおもきつい声でふきこにダメ出しの言葉を浴びせた。

「あんたーね…恐ろしい話をしないでくださいと言うけどね、あんたはそんなことが言える身分じゃないでしょ…あんたーね、自分の胸元と足元をよぉに見てみなさいよ…みっともないとは思ってへんみたいね…おじいさまの介護だと口で言うて、おじいさまとあられもないことばかりしよったことがわかっている以上は…」
「帰ってください!!うちにケチをつけに来たのであれば帰ってください!!」

(バターン!!ガチャ!!)

ふきこは、家の中にかけこんで行った後、ほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を両手でぐしゃぐしゃとかきむしって、床に寝転んで全身を使ってバタバタと暴れまわっていた。

何なのよ一体!!

近所の奥さまは、何でアタシにばかりケチをつけて来るのかしら!!

もうダメ!!

キーーーーーーッ!!

(ビリビリ!!)

ふきこは、ベトベトに濡れている白のブラウスを思い切り破いた後、再びバタバタと暴れていた。

数分後に、ふきこは激しい声で泣いていた。

しかし、その翌日の午後に再び近所で深刻なもめ事が発生したのであった。
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