【女の事件】十三日の金曜日
第8話
そのまた次の日の午後3時半過ぎに、また家の近所で深刻なもめ事が発生した。

この時も、家の中にはふきことひろつぐと祖父だけがいた。

ふきこは、浴室で祖父のお風呂の介護をしていた。

ひろつぐは、いつものように居間にいてCATVのアニマックスに夢中になっていた。

そんな時であったが、玄関の方で激しくドアを叩く音が聞こえていた。

(ドンドンドンドン!!ドンドンドンドン!!)

激しくドアを叩く音と同時に、若い女性の切羽詰まった声が聞こえていた。

「助けて!!アタシ男に殺されてしまうわ!!男が刃物ふりまわして暴れているのよ!!助けて!!」

この時に、ひろつぐは浴室にいるふきこを呼びに行ったが、ふきこは『おじいちゃんのお風呂の介護をしているから…』とものすごくあつかましい声で言い放った。

そしてまた翌日の午後3時半過ぎに、近所の奥さまが家にやって来た。

ふきこは、奥さまから変な目付きで見られてしまった。

ふきこは、祖父のお風呂が終わったの新しいパジャマに着替える準備をしていた。

そんな時に、また近所の奥さまが家にやって来た。

ふきこは、白でイチゴもようの授乳パジャマを着ていたが、汗くさいにおいがしていたので近所の奥さまはものすごく変な目付きでふきこを見つめながらこう言うていた。

「ちょいとあんたー…あんたーはいつからフーゾクみたいなマネをするようになったのかしらねぇ…」
「えっ?どういうわけなのでしょうか?」
「あんたーね、おじいさまの介護をしているときにいつも授乳パジャマを着てしよんやねぇ。」
「奥さま…変なことを言わないでください!!」
「変なことを言いたくもなるわよ…あんたーね、左の胸の授乳口のところにおじいさまのヨダレがべっとりついてはるわよ!!」

ふきこは、授乳パジャマの左の胸の授乳口の部分を見た時、ものすごく大きな衝撃を喰らったので、悲鳴をあげそうになっていた。

イヤァァァァァァ!!

何なのよ一体!!

授乳口に大きいヨダレが本当についているわ!!

祖父のお風呂の介護をしていた時に…

祖父がアタシの乳房に吸い付いて来たわ…

その時にできた大きなヨダレだわ!!

どうしよう…

ふきこは、近所の奥さまにどうやって説明すればいいのかわからずに、困り果てていた。

近所の奥さまは、ものすごく変な目付きでふきこに言うた。

「奥さま、おじいさまを福祉施設に移した方がいいと思うわよ。あんたーは介護とフーゾクをごっちゃにしよるけん、近所から変な目でみられるのでしょ。」
「どういう意味なのかしら?」
「意味はないけど…そんなことよりもね、きのうのことだけど、戸坂さんの家の奥さまがね…お風呂場でリスカして亡くなったわよ。」
「ええ!!戸坂さんの家の奥さまがリスカをして亡くなったって!?」
「そうよ…あんたーは、戸坂さんの家の奥さまがリスカをして自殺した原因がゼンゼンわかってへんみたいねぇ…そのことが原因で今朝ガタに深刻な事件が発生したのよ!!」
「どういうわけなのでしょうか?」
「あんたーね!!今朝ガタね…三軒となりのサコウ(佐光)さんカタの娘さんがストーカーの男に殺されたわよ。…ストーカーの男は戸坂さんカタのダンナの弟だったのよ…おととい、ケーサツから警告を受けたのよ…ストーカーの男は事件のあとで逃げる途中で国道バイパスでトレーラーにはねられて自殺したのよ…戸坂さんのご主人ね…弟がストーカーをしていたことが原因で職場をクビになったのよ…奥さまはその事を苦に浴室でリスカをしたのよ。」
「そんな…」
「あんたーね!!人の話を聞いとんかしら!!」
「奥さま!!お願いですから変な目付きでアタシを見ないでください!!うちにケチをつけてるのであったら、帰ってください!!」

(バターン!!ガチャ!!)

ふきこは、ドアをバターンと締めた後に部屋の中へかけこんで行ったが、近所の奥さまは玄関のドアをひっきりなしに叩いて呼び掛けていた。

「ちょいと入江さん!!入江さん!!開けなさいよ入江さん!!」

(ドンドンドンドン!!ドンドンドンドン!!)

ふきこは、ものすごくイライラとした表情で祖父がいる部屋に入った後、両手でぐしゃぐしゃと髪の毛をかきむしっていた。

キーーーーーーッ!!

何なのよ一体!!

近所の奥さまは、どうしてアタシを変な目付きで見るのかしら!!

アタシが久通さんのおじいちゃんに身体を許したおぼえはないと言うているのに…

どうして近所の奥さまは、あることないことをペラペラペラペラとしゃべりまくるのかしら!!

もういや…

アタシもういや…

もういや…

キーーーーーーッ!!

この時、祖父が弱々しい声でふきこに求めて来た。

「ふきこさん…さみしいよ…」
「あのね…甘えないでよ!!よくもアタシの授乳パジャマの授乳口に大きいヨダレをつけてくれたわね!!セクハラ魔!!」

ふきこは、祖父に思い切り怒鳴りつけた後、クッションを投げつけた。

「わざとじゃないのだよ…ワシは妻を亡くしてさみしい…」
「やかましい!!だまりなさいセクハラ魔!!セクハラ魔!!セクハラ魔ダマレ!!」

頭がサクラン状態におちいっていたふきこは、祖父に激しい暴行を加えていた。

久通の両親も、自宅で介護をして行くことに限界を感じていたので、新宮の老健施設へ入所させることを決意した。
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