愛プチ
悶々とした気持ちで顔の泡を洗い流し、鏡に映ったつるんとした顔をみてハッとする。

泡だらけだったとはいえ今普通にアイプチなしのすっぴんでちゃんと目みて喋れてたよね・・?

「どうしよう・・ちょっと前進・・?」

他人から見れば本当にちょっとしたことかもしれないけど、私にとっては大きな一歩だ。
今日のデート頑張れるかも。

わざわざつっかかってきた事にはかなり腹が立つけれど、チャラにしといてあげよう。
私のこの仏の心で。

美月君の去っていった方角に向かって手を合わせた。

「さっ・・残りの準備済ませてとびきりおしゃれするぞー!」
我ながらこういう切り替えの早さにはびっくりするが、心は夜にむけてもう走りだしている。

入念にスキンケアをして、自分の部屋に戻った。

そしてあっという間に、日はどっぷりと暮れ、夜に。

楽しみな事があると、直前に寂しくなってしまうのはなんなんだろうな。
休みも休みの前日が一番楽しかったりするし。
楽しみが終わってしまうのが寂しいからなんだろうけど。

最後に自分の部屋の姿見で全身をチェックし、玄関に向かった。

大丈夫。
ありのままのいつもの明るい私で行けば。
うまくやろうと思わないで、ちゃんと楽しもう。

いつものデートの前のおまじないのような言葉を自分に言い聞かせ、家を出た。

集合場所は最寄り駅の噴水の前。
駅の近くの居酒屋で飲みましょうという誘いだったので上品すぎない程よく清潔感のある格好を意識してきた。
頑張ってくるんとワンカールさせた髪もいつもはどちらかに強風が吹いているかのように一方通行になってしまうが、今回は両方綺麗に内巻きにできたし。
今日は色々と調子がいい。

そわそわと待っていると、進藤さんがこちらに走ってやってきた。

走ってくる時の笑顔も抜群に爽やかである。

「ごめん、待った?」

「ううん、全然!
行きましょう!」

デートでの待ち合わせのテンプレートのような会話をして、仲良くお店に向かった。
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